九嶋曲物工芸にて

先日、田代地区岩瀬にある九嶋曲物工芸さんを見学させていただきました。


kushimamagemono_01湿った重い雪が降るなか、九嶋郁夫さんが私たちを出迎えてくれました。
岩瀬は「手づくりのムラ」と呼ばれていたと九嶋さんは語ります。地区内には曲げわっぱの工房もいくつかあったそうです。羽州街道沿いにある岩瀬には様々な地域から業者が集まり、交流する場になりました。
ムラの中にあった大きな鍛冶屋では一時期1,000人の人々が働いていたと言います。秋田県内で最も古い田村鉄工所(現在は操業停止)は、魚雷や弾頭を作っていたため、敵国が標的の一つとした…などのエピソードも教えていただきました。
曲げわっぱ作りを生業とする家の屋号は、「曲師屋(まげしや)」。幼い頃には7〜8の曲師屋があったと語る九嶋さんには、曲物の仕事を見る機会が多くありました。曲げわっぱの世界に魅せられ、九嶋さんもまたその道に進んでいきます。
そして現在、岩瀬を含む田代地域で操業を続ける曲げわっぱの工房は、九嶋曲物工芸さんのみになりました。


kushimamagemono_02社長室の隅には、大館市と合併する以前の田代町をPRする観光ポスター。
町の伝統工芸として曲げわっぱが取り上げられています。

kushimamagemono_03応接テーブル右にあるのはこちらが持参した「田代まち歩きマップ」(企画監修:ゼロダテ、大館北秋商工会)です。実は私が九嶋曲物工芸さんを訪れてみたいと思ったのは、こちらのマップがきっかけでした。このマップを手に工房を見学に来る方もいたと九嶋さんは話します。

 

この後も曲げわっぱ職人の育成や産業のこれからについて、色々とお話をしてくださいました。
観光はもちろん、その資源の基盤となる産業に対して、私たち地元の住人は何が出来るのか?どんな提案が出来るのか?
九嶋さんから静かに問いを投げかけられているように感じました。
kushimamagemono_04工房に入ってすぐ上を見上げると…とにかく圧巻でした。曲物が密に並ぶ空間が頭上に広がっています。秋田杉の呼吸や鼓動が聴こえてきそう。とてもどきどきしました。
ようやく雪がおさまり、雲間から陽が射す工房には、凛とした空気が流れています。その空気に触れ、こちらも背筋が伸びてしまう想い。
ストーブに置かれたヤカンのお湯がしゅんしゅんと湧く音と、2人の職人さんがわっぱにやすりをかける音が響いています。
1人は九嶋さんの奥様。もう1人は若い男性の職人さんでした。


kushimamagemono_072人が現在手掛けているおひつを見せてもらいました。なんと手触りのいいこと!
九嶋さんはわっぱを指で細かくなぞるように、仕上がりを確認し、二人に指示をしていきます。
kushimamagemono_07ふと手を止めた奥さん、次に手掛ける製品について、郁男さんに相談をしています。
次は市内の老舗菓子店の「せいろ」を作るとのことです。


九嶋さんが最も得意としているのが茶道具。現在も京都や岐阜の茶道具屋さんに製品を卸しています。ご自宅の玄関先には茶道具を並べたショーケースが置かれています。


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九嶋さんは二重巻、三重巻き、四重巻を得意とし強度、保温、非熱伝導に優れた製品を多数生産しています。
「昔はお湯ではなくても、川の水で曲げることの出来る秋田杉もあった」
社会の動きだけでなく、曲げわっぱと職人を取り巻く自然環境も日々刻々と変わっています。
現在九嶋さんは東京の百貨店で実演販売をおこない、お客様に手仕事を実際に見てもらい、対話をする機会を作っていると話しました。
ムラで育まれ、継承されてきた技術。九嶋さんは曲師の精神と真心とともに、曲げわっぱを作り続けています。
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スタッフ S

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