坂口安吾と秋田犬

こんにちは。

今回のブログでは秋田犬会館に眠る隠れたお宝(?)を紹介したいと思います!

 

秋田犬会館の博物室に展示されているこの色紙を見たことがあるでしょうか?

味のある筆跡を見て誰か市民の方が書いた詩かなと思ったのですが、よく見ると「坂口安吾」の名前が。

坂口安吾は昭和初期頃に活躍した作家で、「白痴」や「堕落論」の著者として有名です。
実は私、数年前に表紙のデザインに惹かれて角川文庫の「堕落論」を買って読んだことがあるのですが、最初の数ページを読んだあとの記憶がありません。

そんな因縁のある坂口安吾。気を取り直して色紙に書かれている内容を読んでみましょう。

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秋田犬によす

大館に大の字あれど
見はるかす
大なる何も見当たらず
犬のみひどくデカかりき

坂口安吾
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わかりやすい言葉にするとこのような感じでしょうか?

++++++
秋田犬によせて

大館には大の字があるけれど見晴らしても大きいものは何も見当たらず、犬だけがとても大きかった。
++++++

…なんだかすごく失礼なことを言われている気がしますが、これが坂口安吾の通常運転です。

ちなみに大館で毎年夏に行われている大文字焼きは昭和43年から始まった行事なので、安吾が生きていた時代(明治39年~昭和30年)には鳳凰山の大文字はまだなかったと思われます。「大の字」というのは単に「大館」という地名の「大」を指しているのでしょう。

そもそも、なぜ坂口安吾の色紙が秋田犬会館にあるのでしょうか?
調べてみると、坂口安吾は犬好きで秋田犬を見るために大館を訪れていたことがわかりました。
そのときの様子を綴った紀行文が『安吾 新日本地理』の中の「秋田犬訪問記―秋田の巻」として収録されています。

いったいどんなことが書かれているのか、一部を引用してご紹介しましょう。

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(前略)
真の秋田犬とは何ぞや? これまた現代の神話の一ツなのである。秋田犬、秋田犬、と大そうな熱であり騒ぎであるが、本当の秋田犬とはこれです、という解答は東京の愛犬家を歴訪して廻ってもなかなか得られない。
しかし私は根気よくこの質問をくり返したものだ。そのうちに秋田犬というものもバクゼンたるリンカクだけは少しずつ分ってきた。そして秋田犬というものは大型だけを指すものであるが、これはやや絶滅に瀕していて、秋田県でも大館市という一地域にしか見られない。東京では日本橋のワシントンという犬屋に出羽号の何世だかのメスがいる以外には、血統の正しい大型は殆ど見かけることができないだろうという話であった。
(中略)
翌日、目的の秋田犬を見るために大館へ出発した。私たちは大館市の秋田犬保存会長、平泉栄吉氏宛の紹介状をもらって東京を立ってきたのである。
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青空文庫『安吾 新日本地理』秋田犬訪問記―秋田の巻―より引用。

直接的に「大館市」というワードが出てきたことに少し驚きましたが、この紀行文の内容と秋田犬会館に寄贈された色紙からして、坂口安吾が大館に来たことは間違いなさそうです。
昔から大館は秋田犬の聖地として知られていたのですね!
近年もいろいろなところで秋田犬が話題になっていますが、安吾の紀行文からは昭和20年代にも熱狂的な秋田犬ブームがあったように感じられます。

 

 

昭和の秋田犬事情がわかる貴重な資料なのでこれは是非、紙の本を手に入れたい~!…と思ったのですが『安吾 新日本地理』の文庫は古本しか見つかりませんでした。他にもちくま文庫の「坂口安吾全集・18」などにも収録されていますが、どれも出版されてから時間が経っているので中古で手に入れるしかなさそうです。

では、先程の文章はどこから引用したかというと、坂口安吾作品は筆者の没後50年を経過しているので青空文庫で閲覧できるようになっているのです!便利な時代ですね。

全文読みたいという猛者は下のリンクからどうぞ。
安吾は先に紹介した色紙のような独特の語り口で作品を書くので、心にゆとりのあるときに読むことをおすすめします。気分を害されても当方では責任を負えません。笑

安吾の新日本地理 秋田犬訪問記―秋田の巻―
http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/45909_37865.html

 

STAFF O

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